死んだらどうなる? 岸本英夫教授の場合(8)
昭和36年の秋、岸本英夫氏はアメリカで、がん治療の権威に診察してもらう機会を得ました。
そしてこう言われました。
「珍しいケースです。あなたのがんは、繰り返し出てくるが、そのつど、早く切り取れば、長く生きられるでしょう」
岸本氏はすぐに、日本へ電報を打ちます。
〝I can live long〟
(私は長生きができる!)と。
そして、がんに冒されて以来、日に何度も患部を映していた懐中鏡を使うことも忘れ、死の恐怖から解放されていきました。
その後も、がんは相変わらず皮膚に顔を出し、切除は繰り返されましたが、
「先日切り取ったがん細胞は良性でした」
という医師の言葉に、ますます安心しました。
けれど、がんが表面に現れなくなっていた昭和38年、ついに脳へ転移し、死の床に就きます。
「患者は、医者の『まだ、大丈夫です』という言葉に自ら進んでだまされているうちに、死んでゆく」と、自身が指摘していたように、失意のうちに、60年の生涯を閉じたのです。
『死を見つめる心』にこう書かれてあります。
「死の問題は、どうしても解かねばならない問題として、人間のひとりひとりに対して、くりかえしくりかえし提起される。どうしても解かなければならないけれども、どうしても解くことができない。これは、永遠のなぞとして、永久に、人間の上に残るであろう」
この大問題について、親鸞会では深く、丁寧に話されていました。